カラーマネジメントについて

デジタルカメラを趣味にしていると、たまに目にする 『カラーマネジメント』
普段はほとんど意識する必要はないけれど、こだわり始めると奥が深く、一度何かでつまづくと非常にややこしいものです

写真は、どんなモニターで、どんなソフトで見ても、ほぼ同じ色で見える事が望ましい

例えば、ここにプリントされた1枚の写真があるとします。

用紙にプリントされた状態のものですので、この写真をどこに持って行って、誰が見ても、(プリントの経年変色は考えないものとすれば)
写真自体の色
は常に同じです。

でも、写真自体の色は同じでも、その写真をどんな場所で見るかによって、例えば ”電球” が使用されている部屋で見ると、その電球照明の色が被って写真自体の色味も変わって見えますし、明るい中では鮮やかで美しく見える写真も、暗い部屋の中で見ると微妙な色彩の変化はほとんど見分けられなくなってしまいます。

つまり、
写真自体の色
は同じでも、その写真を見る場所の照明の色や明るさなど、周りの環境によって色味が異なって見えてしまうわけですが、それと同じようなことが、実はデジタル写真でも起こります。

しかもデジタル写真の場合は少し複雑で、色味を変えてしまう要素が複数存在し、それら要素が絡み合ってきます。

モニターキャリブレーションとは?

恐らく、多くの方は、パソコンを購入した際にセットで付属していたモニターを使用されていると思います。 ノートパソコンをメインにされている方はなおさらですね。

もちろん、パソコン本体とモニターを別々に購入している方もたくさんおられると思うのですが、実はこのモニターは、メーカーが違ったり、機種が違ったり、また同じメーカーの同じ機種でも ”個体差” があったりで、同じ画像を表示させるて見比べても微妙に色味が異なってしまう場合がほとんどです。

実際、家電量販店のパソコン売り場に行いますと、今でしたら Windows10 の壁紙が表示されたモニターがズラッと並んでいると思うのですが、そのモニター画面を見て 『こちらの方が鮮やかに表示されているから』 という理由でパソコンを選ぶ方も多いのではないでしょうか。

それはつまり、機種やモニターによって見え方が異なっていることに他ならないわけですが、仮に、一度調整してほぼ納得のいく発色を実現させていたモニターでも、100時間、200時間と使用している内に照度や色合いが変わり、多くの場合、『色は暖色系に ・ 明るさは暗めに』 変化してきます。

この ”モニターの発色や明るさの違い” は、先のプリント写真を見る場合の 『部屋の照明の色や明るさ』 に相当するのですが、この部分が異なってしまうと、同じ画像を表示させても、その画像本来の色や明るさで見えていない事になります。

そこで、定期的に、モニターの発色や明るさを正しい状態に戻す作業が必要になるわけですが、この作業のことを 『モニターキャリブレーション』 と言います。
なお、表示能力に定評あるモニターメーカーである ”EIZO” では、おおよそ200~300時間 (1日10時間使用したとして約3週間~1か月) 毎にキャリブレーションを行うことが推奨されています。

実際には、キャリブレーションまで行ってモニター調整をされている方は、恐らく写真趣味の皆さんの中でも少数派になると思うのですが、モニターの ”色味” と ”明るさ” を調整することは、写真作品の仕上がりにこだわる上で必要最低条件とも言えますので、現在お使いのモニターでも常に意識されて、調整されることをおすすめします。

キャリブレーションセンサー内蔵 : EIZO ColorEdge CG シリーズ @Amazon

モニターを調整しても使用するソフトによって見え方が異なる

実はここからが 『カラーマネジメント』 の本題になるのですが、デジタル写真の場合、モニターをきちんと調整できたとしても、実はそれだけでは、写真を ”本来の色味 (撮影者の意図した色味)” で表現できているとは限らないのです。

例えば、以下の5枚の写真をご覧ください。


これら5枚の写真は、それぞれ以下のプロファイルを埋め込んでいます。

●右の写真:sRGB ICE61966-2.1
●中段左: adobe RGB (1998)
●中段右: apple RGB
●下段左: ProPhoto RGB
●下段右: e-sRGB

※それぞれ画像クリックで少し拡大します
※よろしければダウンロードなさってみてください


マックユーザーの方なら100%、Windows ユーザーの方も現在はほとんどの方が5枚ともほぼ同じ色味で見えていると思うのですが、でも ”Windows で Google クロームを利用されている方” は、下段右の写真だけ色味がかなり薄く見えていると思います。

たぶん言ってる意味がよく分からない方も多いかと思うのですが、Windows で古いブラウザを使っている方の中には、上の5枚が以下のように見える方もおられます。




マックの場合は OS レベルでカラーマネジメントシステム (CMS) が働いているのでどんなソフトを使っても同じように見えるのですが、Windows10 ユーザーの方は、もしよかったら上の5枚をダウンロードして、それぞれの画像を 『ペイント』 か 『フォト』 で開いてみていただくと、それぞれ下に並んだ色味のように見えます。

ちなみに、これらを 『Windows フォトビューアー』 でご覧頂いても、ほぼ同じ色味で見えることになります。

つまり、同じ Windows で同じモニターを使用していても、『Internet Explorer 10』 や 『Windows フォトビューアー』 ではほとんど同じ色味で表示されるのに、『ペイント』 や 『フォト』 で見ると異なる色味で表示されてしまうことになります。

では、なぜこんな現象が起こるのかと言いますと、画像を開くソフトによって、”カラーマネジメントシステム” が働いているか、働いていないか、が異なり、それによって、それぞれの画像に埋め込まれた
ICC プロファイル
がきちんと読み込まれるか、読み込まれないか、が変わってくるからです。