35mm換算ってなに??

35mmというのは一眼用フィルムサイズのことで
デジカメではこのサイズを基準として ”画角を” 換算表記しています

●35mm換算とは?

カメラに興味を持ちはじめて、インターネット上の掲示板などで情報収集するようになると、特に最初の内は 『え?どういう意味?』 と思える部分がいろいろ出てくるのではないでしょうか?

そして、その、最初にして最大の謎が ”画角” の扱いと表現だと思います。

例えば、よく 『35mm 換算で 50mm の画角』 とか 『フルサイズ換算で 85mm 相当の画角』 などという表現が出てくるのですが、本来、角度というのは ”度” という単位で表すものなのに、どうしてみんな ”mm” で言うの? という辺り。

実はこれは 『フィルム一眼レフカメラ』 を基準にした、カメラ界の業界用語のようなものです。
もう一度 先ほど の図を見ていただきたいのですが、フィルム一眼レフカメラの場合は、そもそもフィルム (図内の映像素子の部分) のサイズが 35mmと決まっていました ので、焦点距離が決まれば、そのまま画角も決まることになります。
ですので、もともと焦点距離 ○○mm という表現だけで、写る範囲=画角の話としても通る世界だったのです。

ところがデジタルカメラの場合、フィルムでは 35mm と決まっていた映像素子部分のサイズが千差万別ですので、焦点距離だけでは画角が決まらなくなります。
でも、だからといって

『映像素子がニコンDXサイズの場合は画角が□□に、フォーサーズの場合は△△mmになる』

などと、表現が混在すると余計に話がややこしくなりますので、そこで話を統一するための表現上の規格のようなものが 『35mm換算』 ということです。

●では35mm換算とは、実際にはどういう意味?

それでは、『35mm換算』 とは、実際にはどんな意味なのでしょう?
まず、一眼デジカメの場合は、下の図のようになります。
この場合、レンズそのものは同じで、焦点距離も同じです。
ですが APS-C の方が映像素子サイズが小さいですので、その結果として画角 (=写る範囲)が狭くなります。

この時、仮にフルサイズの映像素子でこの APS-C と同等の画角にしようと思えば焦点距離を伸ばさなければならないわけですが、その割合が、キヤノンの場合だと比率が1.6倍、ニコンの場合だと1.5倍となっています。

ですので、仮にこのレンズの焦点距離が 50mm だとしますと、キヤノンのAPS-Cの場合は

50mmレンズの画角は 35mm 換算 (フルサイズ換算) で 80mm 相当 (50×1.6=80)』、

ニコンのDXフォーマットの場合は

50mmレンズの画角は 35mm 換算 (FX換算) で 75mm 相当 (50×1.5=75)

という表現になります。


次にコンパクトデジカメの場合の 『35mm換算』 ですが、コンデジの場合は、一眼デジとはさらにちょっと意味が違って、下の図のような感じになります。
こちらの 『映像素子と画素数』 で触れましたように、コンデジの場合は映像素子のサイズが劇的に小さくなり、そして上の図のように、画角が同じでも焦点距離そのものが短くなります。

搭載されているレンズも一眼用レンズとは比較にならないほど小さいですので、実際にはもっと小さくなって、焦点距離も一層短くなっています。

つまり、一眼デジの場合の 『35mm換算』 は画角に対してだけの意味でしたが、コンデジの場合は焦点距離的な意味でも換算が含まれていることになります。

実際、IXY900IS の場合ですと、メーカーホームページでは 『焦点距離 : 4.6-17.3mm [35mmフィルム換算 28-105mm]』 と記載されていますので、間違いありません。

ここでご注意して頂きたいのは、上の記載にある 『35mmフィルム換算 28-105mm』 というのは
”写真機特有の画角としての意味の焦点距離” なのであって、本来の意味の焦点距離はあくまでも 4.6-17.3mm だということです。

ここが記載上のちょっとややこしい所なのですが、つまり

●焦点距離 : 4.6-17.3mm [35mmフィルム換算 28-105mm

の、

  ・前半の ”4.6-17.3mm” 部分は 本来の意味 の焦点距離
  ・後半の ”28-105mm” 部分は 画角としての意味 の焦点距離

が混在して記載されていることになります。

つまり、コンデジ (IXY900IS の場合) の広角側は4.6mmという一眼デジではちょっと考えられないような焦点距離で作られていることになり、望遠側の17.3mmでも一眼デジだったら超広角レンズに相当する焦点距離です。

これが何に関わるかといいますと、何をおいても最大の要素が 『ボケ方』 だと思います。

ある程度撮影経験をお持ちの方なら感覚的にご存知かと思うのですが、例えば同じ F4 という絞りでも、焦点距離の短いレンズ (広角レンズ) になるほど、画像全体的にピントが合ったパンフォーカス感が強まって、つまりボケ方は小さく見えるようになります。
17.3mmと言えば一眼で言えば超広角レンズに近い画角になるのですが、映像素子の小さなコンデジ(IXY900IS)の場合はその17.3mmが105mmという中望遠相当の画角になる、ということになります。

図にするとだいたいこんな感じかと思います。
kenken自身は光学的な知識が全くないので、これは個人的な憶測に過ぎないのですが、つまり IXY900IS (コンデジ)の105mm相当の画角ボケ方は、一眼の17mm相当で撮影した写真をコンデジの映像素子の大きさに相当する範囲にトリミングした状態とほぼ同じくらいの感じ・・・ というイメージで、だいたい間違いないような気がしています。

一般的に、『映像素子が小さくなるほどボケ方が小さく (ボケないように) なる』 と言われていますが、恐らくこれを厳密に表現しますと 『本来の意味の焦点距離短くなるカメラほどボケ方が小さくなる』 という意味のような気がします。
映像素子が小さいカメラになるほど、映像素子が大きなカメラと 『同等の画角で撮影できるようにする』 ためには 『本来の意味の焦点距離を短くせざるを得ない』 ので、だから結果としてボケ方が小さくなる・・・という意味のような気がします。

あまり上手に撮れていないのですが、広角側での実写サンプルが以下の通りです。

IXY900IS / F2.8 で撮影
画角としての意味の焦点距離 28mm
実際の焦点距離 4.6mm
1Ds MarkII + 28mm F1.8 / F2.8 で撮影
画角としての意味の焦点距離 28mm
実際の焦点距離 28mm

これらどちらも 絞りは F2.8 で撮っています。
しかも IXY の方は、マクロモードでボケが出やすい撮り方をしているのですが、それでも一眼デジのボケ方には遠く及ばず、歴然とした差があります。
実際には4.6mmという焦点距離なのですから当然なのですが、これが一眼デジタルとコンパクトデジタルの 『35mm換算』 の違いです。

ボケを活かした作品作りが目的の場合は、コンデジではほぼ不可能と考えた方が良いかも知れないですね。
ですがその反面、ボカすばかりが写真ではありませんので、逆にこの 『ボケないこと』 が一眼には到底真似の出来ないコンデジの圧倒的な強みであるとも言えます。

実際、この IXY みたいな被写界深度の深い写真を一眼で撮ろうと思えば、さらに3~4段くらいは絞り込む必要があります。
ところがそうなりますと、露出の組合せ的にシャッター速度が遅くなりますので、当然手ブレの危険が増えてしまいます。
それを防ごうと思って ISO を上げると今度はノイズが増えてきます。
ですので、もはや三脚を持ち出してセッティングから始める必要が出てきます。

つまり コンデジだったら手持ちで簡単に撮れる写真が、一眼だとかなり手間の掛かる大げさな撮影になってしまう場合もあります
プロがコンデジに画質を求める本当の理由がこの部分にあるのですが、最近ではコンデジの画質も一眼に迫るものもあるようですので、このあたりの特性からデジカメを選んでみるのも良いかも知れないですね。